夏色公園

某サイトでさ、全ゲームを中央値順に並べれば一般的に名作と呼ばれるゲームは簡単にみつかるじゃない。

でもそんな中

「世間的にはそんなに評判よくないけど、俺にとっては神!」


みたいなゲームに出合う事あるよね。
夏色公園はまさにそんなゲームだったよ。

物語の内容は、主人公が職を失いホームレスになったところから始まる。
主人公が大人でホームレスなゲームはなかなかレア。他には「おうちに帰るまでがましまろです」くらいしかぱっと思いついかない。ましまろです。の方は仕事も見つかるし、途中から学校いったりするけど、夏色公園の主人公は基本エンディングまでホームレス、ルートによってはヒモになりやがります。公園に集まってくるメンツも毎日ホームレスと戯れるだけあって、やっぱそれなりにみなさんいろんなものを抱えてらっしゃるわけで。

各ヒロイン√では各ヒロインのそこにスポットが当てられる。
全ヒロインをクリアすると、念願のエンプティー√に入れる昔ながらの仕組み。各ヒロイン√もそれなりに面白かったけど今回はエンプティー√のみの感想ってことで。

エンプティー√の感想


ホームレスとなった主人公をこの公園で生きていけるように助けてくれたのが公園のホームレスのリーダーのエンプティーという少女。このエンプティーが謎がまた多い!。各ヒロイン√でも達観したアドバイスくれたり、すごい人脈で主人公を助けてくれたり、知識においても大人顔負けな部分が見え隠れして、なんでホームレスなんかやってる?もしかして実はお金持ちお嬢様でっていう展開?ってすごく気になってくる。

エンプティーは名前の通り空っぽで地位も名誉もお金すらも持っていない。
それが原因かわからないけど、結構あきらめ気味な人生だったりする。
人によるかもしれないけど、ほら人間ってさ、自分のためにがんばって生きる。って結構簡単そうで難しいじゃない。エンプティーも「1人で生きていくことが自立だ」っていってたけど、誰かのために生きる方がまだはるかに頑張れる気がするよ。
エンプティもー最初は「早く死んでもそこまで。」みたいな考え方してたんだけど

主人公を好きになって、主人公に好かれて初めて「自分で自分の事が大事に思えた」って言ってくれて、気持ちが変化してそこから”頑張って生きよう”とする姿は結構好きな物語。

人間、1人ぼっちならいつ死んでもそんなに気にしないけど、本当に大切な人ができると、「簡単に死ねない」って思うようになるよね。エンプティーもそんな1人。
そして最後はエンプティーの独白で物語が幕を閉じる。
グランドフィナーレってことで、主題歌の星屑シンフォニーをエンプティー役のRITAさんが歌うんだよ!こういう演出大好きなんだよ!俺!!


こっからは本当に気持ち悪い戯言なんだけどさ、
自分も若いときは好き勝手やって、エンプティーみたいに「運悪く死んだらそれまで」くらいで生きてきたけど、結婚して子供が生まれると急にびびって「死ねない、一生懸命生きねば」と急に思い始めてしまった。しかし時すでに遅し、若い頃の好き勝手やったツケが回ってきて、毎日薬を5錠くらい飲まないといけない人生になったけど、なんとか間に合った気はする。そういう自分と重なる部分もあって好きな物語だった。
果たしてエンプティーは大事なものができて今更一生懸命生きようとしても間に合うのか・・(思わせ)

決して万人受けするような物語じゃないし、自分くらいしか好きじゃないんだろうな。っていう自信はあるからあえて感想を投稿。

夏ノ雨

 

夏ノ雨 (CUBE) (2009-09-25)

夏ノ雨は個人的にはすごく好きな作品。
エロゲーには夏ゲーと呼ばれる夏を舞台にしたゲームが沢山あるが、夏ノ雨もそんな夏ゲーなんだけど、ポップで明るく健康的な感じではなく、ややシリアスなシナリオになっている(この辺がタイトルの雨の成分かなと予想)

主人公は高校生。サッカー部で問題を起こして休部中なので復帰のために河川で練習する日々を送っている。そこに現れた美少女が実は主人公の家族を捨てて離婚した父親と新しい母親の間に生まれた女の子で、一緒に住む事に・・みたいな流れなんだけど、主人公がサッカーバカってのもあって、いじめや、ネグレクトなどの青臭い、泥臭い青春を真っ向から描いている作品になっている。人によっては主人公の言動がガキっぽく感じるかもしれないけど、これくらいの年齢だとこういうものじゃないかなって思うけどね。

ヒロインのルートはどれも完成度が高く、それぞれのヒロインで扱われる問題は先生と生徒、親と子、友情と恋愛など非常に現実的でやや重たい内容になっている。魔物狩りが裏稼業とか、人の心が読める超能力者とか、ヒロインが実はロボットだったとかいうご都合主義しやすい超自然的な設定は一切ない。
主人公もサッカーが得意な普通の高校生。物語中の主人公は無力で困難を解決する大人の力をもっていない。その上でヒロインと主人公で一生懸命困難に立ち向かう姿が心にぐっとくるんだよね。
理香子√ 美沙√が好きだったので以下その感想を

理香子√(メインヒロイン)

理香子は亡くなった父の遺言を守るため、父が見捨てた元嫁とその子供たちの家庭に世話になるという超絶ハードモード人生を歩むヒロイン。
異母兄弟の世話になるって事で(理香子の父の元家族からみれば家庭崩壊を起こした張本人の娘)心をかたくなに閉ざしていたんだけど、なんだかんだで主人公と恋仲になってしまう。大人の力で最終的に理香子は身を引く選択肢しかないところまで追いつめられるんだけど、その時の親友の香奈とのやり取りで、理香子の弱さがみえてくるシーンが印象深い。今まで強く一人で生きてきた理香子が恋愛を知って弱くなってしまった、そんな場面。
人間って幸せを知ってしまうと、初めてそれまで不幸だったことがわかってしまうんだよね。

夏ノ雨ってタイトルだけあって、理香子√では雨の演出が印象的に使われていたのもGOOD。
むしろ理香子√以外はそんなに雨ふってなくない?

美沙√

理香子√の次に好きだったのは美沙√
美沙は主人公の学校の担任。学校の先生と生徒のシナリオはそこそ見かけるけど、簡単に先生と生徒でつきあっちゃうモラル感のなさが今一つ好きになれなかったんだよね。ところが夏ノ雨の美沙√では主人公は普通にふられる。美沙も生徒との恋愛がダメなのはわかっている。でもだんだん主人公が好きになって沼っていって理性より感情をとってしまってどうしようもなくなっていく様子がちゃんと描かれていてよかった。

総評

全体的に完成度も高く、好きなゲーム。
現実離れした設定とか超自然的なご都合主義が好きじゃない人にはおすすめ!
でもゲームだから多少のご都合主義はあるので過度の期待はしたらだめかな
★4つで名作!

4 out of 5 stars (4 / 5 名作)